防音材料と構造
吸音材
グラスウールのように、材料自体に吸音性能がある材料。
吸音構造
穴あき板のように、材料自体の吸音性能はほとんどないが、背後吸音層と組み合わせて吸音性能をもたせる構造。吸音性能は、材料の種類によって差異を生じるだけでなく、同じ材料でも厚さ、密度、表面の通気性などに加えて背後空気層の大小によっても変化する。
多孔質材料
グラスウールやロックウールに代表される、繊維に多数の隙間や連続気泡がある材料で、天井材などに利用しやすく、加工した形成化粧板がある。また、吸音特性とその要因には次の項目が挙げられる。
- 材料の厚さが厚くなるほど吸音率は大きくなり、厚さが波長の1/4程度以上で吸音率はほぼ一定となる。
なおペンキ塗料などで表面の通気性が損なわれると高音域の吸音率が低下する。
- 材料のかさ密度が高いほど低音域の吸音率は大きくなるが、一定以上かさの密度が大きくなると吸音率に差異は生じなくなる。
- 表面を布、グラスクロス、ポリエチレンフィルムなどで被覆して利用されることが多いが、被覆材によって通気性が損なわれると吸音性能は低下する。
- 背後吸音層が大きいほど、低音域まで吸音率は高くなる。また、比較的薄い多孔質吸音材でも背後空気層を大きくすると低音域まで広い周波数帯域を吸音できる。
穴あき板吸音構造
多数の穴があいた板材と背後空気層を組み合わせた
吸音構造であり、基本的には板の材質は吸音性能を生じない。
吸音特製の傾向は共鳴周波数を中心とした山型の特性を示す。
吸音特性に影響する要因としては、
(1)板厚 (2)穴の径 (3)穴のピッチ (4)背後空気層 (5)下地構造 などである。
板状吸音構造
合板などの板材と背後空気層を組合わた吸音構造である。
音楽ホールなどの残響調整以外にはあまり利用されることは少ない。
むしろ、壁や天井の剛性が低い場合には、板共振によって残響音が短くなったり、共振による障害が発生するので注意が必要である。
区分 |
材料の例 |
多孔質吸音材量 |
ロックウール、グラスウール、軟質ウレタンフォーム ロックウール化粧吸音板、グラスウール化粧吸音板、木毛セメント板 |
穴あき板吸音構造 |
穴あき石膏ボード、穴あきスレートボード、穴あきハードファイバーボード、穴あき金属板 |
板状吸音構造 |
合板、ハードファイバーボード、石膏ボード、スレートボード、プラスチック板、金属板 |
膜状吸音構造 |
ビニールシート、帆布カンバス、ポリエチレンボード |
その他 |
カーテン、敷物、椅子、吊り下げ吸音体 |
吸音(きゅうおん)
音波のエネルギーが他の形のエネルギーに非可逆的に転換される現象。
例えば、空気中を伝搬する音波は、そのエネルギーの一部が空気の粘性のため熱に、また酸素分子の振動のため振動エネルギーに転換される。
ただし、この逆の現象は生じない。これは空気による吸音の例である。
室内で音波が壁などに入射したとき、そのエネルギーの一部は反射され、一部は壁の内部で熱となって吸収され、残りは室外に音として出ていく(透過音)。室内の音だけを考える場合には、壁の内部で吸収されるものと透過するものとを区別する必要はなく、むしろ両者の和を吸音と考えるほうが便利である。
この吸音エネルギーの入射エネルギーに対する比を吸音率という。
また大きな吸音率をもつ材料は吸音材とよばれる。
吸音材はその名称のためかしばしば遮音材として誤用されるが、定義から明らかなように、吸音は透過音を含むので、遮音用に用いる場合、注意が必要である。
※ [ 日本大百科全書(小学館) ]
吸音材(きゅうおんざい)
音のエネルギーを部分的に熱エネルギーなどに変換する材料。
室内騒音を低下させたり、室内音響計画における残響時間の調整、エコーの減少に寄与する。
吸音機構により次の区分がある。
- テックス、グラスウール、ロックウールなど多孔質あるいは繊維状の材料。
孔中の空気が音波で振動し、その結果生じた摩擦により音のエネルギーが熱エネルギーとなって吸収されるもので、高音に適する。
- 弾性の多孔質材料。
音波で材料自体が振動し、おもに内部粘性で吸収するもので、低音および高音に適する。
- 剛壁とある間隔を置いて設置された薄板。
音波で薄板が振動し空間内部、取り付け部の損失で吸収するもので、低音に適する。
- 剛壁とある間隔を置いて設置された孔(あな)あきの板。
板自体は音波でほとんど振動せず、孔部の空気が裏側空間をスプリングとして振動し吸収するもので、おもに低音に適する。
- 内部に広がりをもつ大きな穴を有する材料。
音波で穴入口部の空気が穴内の空気をスプリングとして振動し吸収するもので、低音に適する。
※ [ 日本大百科全書(小学館) ]